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ATOGIKの倉庫

痕菊の倉庫
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  • 05/03/16:09

死んだ街で

今日いる街は、西の端あたり。
つい20年前まではだいぶ栄えていたのだが、
近くの樹海に住む化け物が或る事件を切欠に大量に攻め入って、
そこに住む人間達はなす術も無く全滅されたらしい。

その後、化け物の棲みかとなった街は、
ハンターの好狩場となった。
そのせいもあって、前より化け物が少なくなり
旅人が住むようになった。

今日この街に来たのは、狩りの為だ。
ある情報によると、化け物の活動が活発になってきたらしい。

黒いジープに乗ってきた男は、街の門で止めると、すぐに降りてきた。
結構小柄で、そのくせ地面についてしまう程大きな砂色のコートを着、
中にはチェーンのメイルを着ている。
腰にはポーチが下がっており、何やら重そうなものが入っている。
黒いブーツは、端先に金属の板が付いていて、夕日のオレンジを反射させていた。
黒い髪はそれほど長くないが、まるで整えられていないようだ。

コートの下の方はもう既にぼろぼろで、男は引きずりながら門をくぐった。
街は静まり返っていて、建物は瓦礫と化している部分が多かった。
深い霧で覆われた街は、人が住んでいる気配はまったく無く、
時々遠くから生き物の鳴き声らしきものが聞こえてくるくらいだった。

男は、木の根で盛り上がった大きい道路を歩きはじめた。
そして、街で一番高い塔までつくと、塔を見上げた。

塔は蔦やコケで覆われ、入り口である扉は乱暴に開けられた形で壊れていた。
男は、ゆっくりと塔に入った。

塔の中は、空気が違った。
暗く湿った感じは、どうやら上の方からくるようだった。

塔の中央にある、大きな螺旋階段を昇り始めると、
いきなり後方から、喉の潰れたような声が聞こえた。

「ギシャー!!」

男は冷静で、振り向かずに素早く横へ飛んだ。
なびいたコートを掠って、灰色の何かが勢いよく階段にぶつかる。
灰色の何かはもがくと、ドカッと大きい音を立てて飛んだ。

男は、飛んでいった方向に目をやると、すぐに3段飛ばしで階段を昇っていった。

灰色の何かは、空中を飛行しながら男を追った。
両肩からヒレのように伸びたそれは、バサバサを音を立てて、
鋭いくちばしは、威嚇するようにカチカチ鳴っている。

5階程昇ったあたりで、男は急に振り向いた。
それを見た灰色の鳥は、男目掛けて一直線に突進した。
男はそれを確認すると、長い何かを懐から取り出し、構えた。

それは、上下二連のセミ・ポンプショットガン(その名の通り、銃口が二つに分かれてあり、切り換えによって半自動かポンプ作動の2種類の作動・装填方式を選択できる散弾銃)で、
チタン合金の銃身が宵月に輝いた。

男は、一度だけトリガーを引いた。
銃口に、あと数センチでくちばしがつく距離で。

鳥は、爆音と共に頭部が飛び散った。

突進のスピードは消され、一瞬空中に留まると
不愉快な音をたてて落ちた。

その後、空になった薬莢が乾いた音を立てると

男はまた螺旋階段を昇りはじめた。

つづく

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