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死んだ街で 3
途端、山は崩れ、更に白い霧を出しながら、”それ”は現れた。
唐突だった。
ビー玉が爆発して、ほんの一瞬だった。
”それ”は猛烈な勢いで男へ飛んでいった。
男の3倍も4倍もある躰はいとも容易く男を後方へ突き飛ばした。
男は成す術もなく、転がっていった。
一瞬、その空間だけ霧が晴れ、”それ”は姿を現した。
人より大きいその体は、全身を灰色の鱗が占め、頑丈そうに月光を鈍く反射している。
四足歩行する足は太く、爪先は牙のような爪が幾つも並んでいる。
胴体は野太く、その割に細く短い尻尾は先端が膨らんでいた。
頭部に至っては皺だらけだった。
小さな目は片方が斬られて潰れ、大きく垂れ下がった耳は半分しか無い。
しかしもっとも特徴的である長い鼻は、大木の幹より硬そうだ。
”それ”は荒く鼻息を出すと、ゆっくり飛んでいった男の方へ歩いていった。
しかし、そこに男の姿は無かった。
男は、”それ”の二つ手前の柱に身を隠していた。
左腕からは血が流れ出ている。
その腕に布を巻きつけながら、男は舌打ちをした。
「西洋の化けモンが・・・!」
巻きつけ終わると、すぐに柱から飛び出した。
すると、さっきまで男がいた柱は、右側へ吹き飛んだ。
”それ”は利く鼻で男を探したのだ。
すぐに男の逃げた方へ方向を転換し、狙いを定める。
男は立ち上がって右手で銃を構えた。
そして、瞬時に四発打ち込むと左へ横転した。
そこへ”それ”は飛び込んでいった。
”それ”はまたすぐ止まり、男の方へ方向転換する。
銃はまったく効いていないようだ。
男がまた舌打ちをする。
「くそっ! 銃も効かないんじゃどうすれば・・・・・・!」
男はあることを考えた。
しかし、その考えは自分に大きい被害をもたらすものだった。
男は急いでポーチから単発式の弾丸を取り出し、中身を捨てた。
そしてそこにビー玉型の爆弾を二つ詰め、同じのを二つ作った。
銃に装填すると、”それ”は男へ向かって走り出した。
”それ”は、男が何をしているのか判っていた。
しかし、”それ”は突進した。
向こうから来る”それ”に向かって、男は銃を両手で構えた。
しっかり狙いを定め、肩に固定する。
布を巻いた左手でハンマー近くのピンを抜いて、上下同時射撃を可能とする。
男は片目を瞑って、歯を食いしばって言った。
「あばよ。」
”それ”が一番手前の柱まで来たとき、弾は放たれた。
耳を壊す程の爆発音と、大砲の様な衝撃波を出して、
”それ”に弾は直撃した。
男は、目を離さずに見ていた。
しかし、一寸というところで弾は逸れた。
弾は二発とも”それ”の左右を飛んでいった。
そして、そのまま”それ”は男に突撃する。
男は、頭を大きく後ろに反らして高く飛んだ。
男には何があったのか理解できなかった。
ただ、最期にぶつかる直前、
男の目には、鼻の横に二本の白く光る牙が映っていた。
つづく
唐突だった。
ビー玉が爆発して、ほんの一瞬だった。
”それ”は猛烈な勢いで男へ飛んでいった。
男の3倍も4倍もある躰はいとも容易く男を後方へ突き飛ばした。
男は成す術もなく、転がっていった。
一瞬、その空間だけ霧が晴れ、”それ”は姿を現した。
人より大きいその体は、全身を灰色の鱗が占め、頑丈そうに月光を鈍く反射している。
四足歩行する足は太く、爪先は牙のような爪が幾つも並んでいる。
胴体は野太く、その割に細く短い尻尾は先端が膨らんでいた。
頭部に至っては皺だらけだった。
小さな目は片方が斬られて潰れ、大きく垂れ下がった耳は半分しか無い。
しかしもっとも特徴的である長い鼻は、大木の幹より硬そうだ。
”それ”は荒く鼻息を出すと、ゆっくり飛んでいった男の方へ歩いていった。
しかし、そこに男の姿は無かった。
男は、”それ”の二つ手前の柱に身を隠していた。
左腕からは血が流れ出ている。
その腕に布を巻きつけながら、男は舌打ちをした。
「西洋の化けモンが・・・!」
巻きつけ終わると、すぐに柱から飛び出した。
すると、さっきまで男がいた柱は、右側へ吹き飛んだ。
”それ”は利く鼻で男を探したのだ。
すぐに男の逃げた方へ方向を転換し、狙いを定める。
男は立ち上がって右手で銃を構えた。
そして、瞬時に四発打ち込むと左へ横転した。
そこへ”それ”は飛び込んでいった。
”それ”はまたすぐ止まり、男の方へ方向転換する。
銃はまったく効いていないようだ。
男がまた舌打ちをする。
「くそっ! 銃も効かないんじゃどうすれば・・・・・・!」
男はあることを考えた。
しかし、その考えは自分に大きい被害をもたらすものだった。
男は急いでポーチから単発式の弾丸を取り出し、中身を捨てた。
そしてそこにビー玉型の爆弾を二つ詰め、同じのを二つ作った。
銃に装填すると、”それ”は男へ向かって走り出した。
”それ”は、男が何をしているのか判っていた。
しかし、”それ”は突進した。
向こうから来る”それ”に向かって、男は銃を両手で構えた。
しっかり狙いを定め、肩に固定する。
布を巻いた左手でハンマー近くのピンを抜いて、上下同時射撃を可能とする。
男は片目を瞑って、歯を食いしばって言った。
「あばよ。」
”それ”が一番手前の柱まで来たとき、弾は放たれた。
耳を壊す程の爆発音と、大砲の様な衝撃波を出して、
”それ”に弾は直撃した。
男は、目を離さずに見ていた。
しかし、一寸というところで弾は逸れた。
弾は二発とも”それ”の左右を飛んでいった。
そして、そのまま”それ”は男に突撃する。
男は、頭を大きく後ろに反らして高く飛んだ。
男には何があったのか理解できなかった。
ただ、最期にぶつかる直前、
男の目には、鼻の横に二本の白く光る牙が映っていた。
つづく
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