忍者ブログ

ATOGIKの倉庫

痕菊の倉庫
04 2024/05 1 2 3 45 6 7 8 9 10 1112 13 14 15 16 17 1819 20 21 22 23 24 2526 27 28 29 30 31 06

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • 05/03/22:23

死んだ街で 2

いくら昇っただろうか

月が塔を一度越え、向こうの空で傾きを始める。
灰色で、所々木が腐食した塔の内部は、湿っている。
窓から差す月光は、痛んだ石造りの階段を晒し、
男はその上を通る。

螺旋を果てしなく昇る先、出くわす怪鳥は数知れず。
幾度と塔からは銃撃音が聞こえた。

男はふと、昇り続ける脚を止めた。

止めた足元からは、階段の色が違った。
冷たく感じていた灰色でなく、暖色の濃赤。

見るからにそれは、意図的なものではなかった。

男はそれまでと変わらず、ゆっくりと昇り始める。

赤の階段は妙に摩擦が強く、昇る足音さえ出さない。
その上、昇るにつれ空気が暖かくなってゆく。

その内、古臭い鉄の臭いがしてきた。

増える怪鳥を片っ端から撃ち、落ちる薬莢を蹴りながら進むと、
突然階段は終わった。

目の前にあるのは、扉。

木造の扉は下の方が完全に赤に染まり、所々壊れている。
しかし、扉としての機能はしっかり役目を果たし、壁に空いている穴を閉じていた。

「ここか・・・」

男は呟くと、腰のポーチから単発式の弾薬を取って銃を再装填した。
そして、鍵と取っ手の無い扉をゆっくりと銃で押す。

扉は、音を鳴らしながら、内側に開いていった。

途端、激しい異臭と白い霧が中から溢れてきた。

コートを首までしっかり閉め、鼻まで覆うように顔にタオルを巻きつける。
銃を銃口を下に向けた形で両手で持つと、またゆっくりと霧の中を進む。

途中見えた柱は、無数の傷があるにも関わらずしっかり立っていた。
その柱の傷を調べながら、部屋の中央と思われる場所へ足を進める。

10分程で、部屋の中央に着く。

部屋の中央には、大きな山状の突起があった。
横幅はだいたい5メートル、高さは天井まで伸びる柱の半分程度。

男は、その山が深い霧の中からなんとか見える位置で止まっていた。

山からは、物音が聞こえる。
地響きのように、何かが唸る音。
そのトーンの低い音がなる度、山は震えていた。

男は深呼吸をする。
腰の二番目のポーチから、大きさがビー玉の爆弾をいくつか取り出す。
爆弾には短い紐が付いていて、それは導火線の役目をしている。

左手の篭手でひとつに火を点け、白い山に向かってはじく。

爆弾は白い山を上から転がり、中腹で止まった。

そして二秒ほどで、爆発した。

つづく
PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(05/09)
(05/06)
(04/27)
(04/17)