忍者ブログ

ATOGIKの倉庫

痕菊の倉庫
04 2024/05 1 2 3 45 6 7 8 9 10 1112 13 14 15 16 17 1819 20 21 22 23 24 2526 27 28 29 30 31 06

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • 05/03/22:06

死んだ街で 3

途端、山は崩れ、更に白い霧を出しながら、”それ”は現れた。

唐突だった。

ビー玉が爆発して、ほんの一瞬だった。
”それ”は猛烈な勢いで男へ飛んでいった。
男の3倍も4倍もある躰はいとも容易く男を後方へ突き飛ばした。
男は成す術もなく、転がっていった。

一瞬、その空間だけ霧が晴れ、”それ”は姿を現した。
人より大きいその体は、全身を灰色の鱗が占め、頑丈そうに月光を鈍く反射している。
四足歩行する足は太く、爪先は牙のような爪が幾つも並んでいる。
胴体は野太く、その割に細く短い尻尾は先端が膨らんでいた。
頭部に至っては皺だらけだった。
小さな目は片方が斬られて潰れ、大きく垂れ下がった耳は半分しか無い。
しかしもっとも特徴的である長い鼻は、大木の幹より硬そうだ。

”それ”は荒く鼻息を出すと、ゆっくり飛んでいった男の方へ歩いていった。
しかし、そこに男の姿は無かった。



男は、”それ”の二つ手前の柱に身を隠していた。
左腕からは血が流れ出ている。
その腕に布を巻きつけながら、男は舌打ちをした。

「西洋の化けモンが・・・!」

巻きつけ終わると、すぐに柱から飛び出した。
すると、さっきまで男がいた柱は、右側へ吹き飛んだ。

”それ”は利く鼻で男を探したのだ。
すぐに男の逃げた方へ方向を転換し、狙いを定める。

男は立ち上がって右手で銃を構えた。
そして、瞬時に四発打ち込むと左へ横転した。
そこへ”それ”は飛び込んでいった。

”それ”はまたすぐ止まり、男の方へ方向転換する。
銃はまったく効いていないようだ。

男がまた舌打ちをする。

「くそっ! 銃も効かないんじゃどうすれば・・・・・・!」

男はあることを考えた。
しかし、その考えは自分に大きい被害をもたらすものだった。
男は急いでポーチから単発式の弾丸を取り出し、中身を捨てた。
そしてそこにビー玉型の爆弾を二つ詰め、同じのを二つ作った。
銃に装填すると、”それ”は男へ向かって走り出した。

”それ”は、男が何をしているのか判っていた。
しかし、”それ”は突進した。

向こうから来る”それ”に向かって、男は銃を両手で構えた。
しっかり狙いを定め、肩に固定する。
布を巻いた左手でハンマー近くのピンを抜いて、上下同時射撃を可能とする。
男は片目を瞑って、歯を食いしばって言った。

「あばよ。」

”それ”が一番手前の柱まで来たとき、弾は放たれた。
耳を壊す程の爆発音と、大砲の様な衝撃波を出して、
”それ”に弾は直撃した。
男は、目を離さずに見ていた。

しかし、一寸というところで弾は逸れた。
弾は二発とも”それ”の左右を飛んでいった。
そして、そのまま”それ”は男に突撃する。
男は、頭を大きく後ろに反らして高く飛んだ。

男には何があったのか理解できなかった。
ただ、最期にぶつかる直前、
男の目には、鼻の横に二本の白く光る牙が映っていた。

つづく
PR
<<< PREV     NEXT >>>
新着記事
(05/09)
(05/06)
(04/27)
(04/17)